コンクリートのり面の木本類導入による再緑化手法の検討


コンクリート吹付のり面の緑化
 高速道路等の切土のり面は、自然環境保全や景観的調和への配慮等から、今日では各種緑化工法が実施されるようになってきています。しかし、過去にコンクリート吹付処理されたのり面は今でも残存して景観上問題になっている例も多く、それらの再緑化が要望されています。
 ここでは、その再緑化に自生木本類のユニット苗を用いたJH試験研究所との協同実施試験例をご紹介します。

試験地の状況
 現場は八王子市裏高尾付近のJH中央自動車道本線トンネル坑口上切土のり面(勾配=1:1、南向き)で、コンクリート吹付施工後約25年以上経過し、現地調査ではコンクリートの割れ目にウツギ・ヌルデ等の樹木の侵入が見られ、コンクリート背面には最小1p、最大30p、平均13.5pの強風化層がありました。

予備試験による生育基盤決定
 そこで、コンクリートに削孔して地山と連結をつくり48パターンの生育基盤の実験をしたところ、土のうで生育基盤をつくり、その上からノシバ種子を混入した厚層吹き付け資材を混入したもの(図1)の生育が良好でした。


ユニット苗による木本緑化
 その後、本線の老朽化したコンクリート吹付のり面で補強のために現場打ちコンクリート枠工(厚15p)を施工し、その枠を利用して図1の生育基盤を施工し、そこにユニット苗(写真1)を利用した緑化を行いました。

写真1ユニット苗

ユニット苗の概要
 ユニット苗は、小型座布団状の袋に入った用土に種子を発芽させたもので、種子は景観や遺伝子レベルの種に配慮して現場付近から採取したものを用い、JHの緑化試験場で生育させたものです。

活着状況
 5寸釘3本で斜面に固定するユニット苗の施工性は良好で、平成8年3月に施工し、約2ヶ月後にのり面は緑に覆われ、その後も順調な生育を示しました。
 但し後の異常気象による乾燥で、乾燥に弱いヤナギや陰樹の活着が衰えましたが、その後は土のう数の増加や土壌の保水性対策や適正配植の見直しなどによって良い結果を得ています。
 施工後2夏を経過した平成8年9月に実施した根系調査では、ユキヤナギの根系が十分な伸長を示し、一部の根(φ3o程度)がコンクリートへの削孔から地山に侵入しているのが確認されました。(図2)


出典:コンクリートのり面の木本類導入による再緑化手法の検討小澤徹三・山田一雄(日本道路公団)、長谷川秀三(ジオグリーンテック梶j、中野裕司(ライト工業梶j第28回日本緑化工学会研究発表(1997)