ミツバツツジ類保全のための地域生態学的研究 -房総・小糸川流域における分布と民家庭先の生育実験-


ミツバツツジの減少と保全

ミツバツツジは減少しているミツバツツジ類は日本各地に見られますが、地域固有性が多く、それらのいくつかは絶滅の危機に瀕しています。その主なる理由は、次のようなものです。

ミツバツツジ類減少の原因 ・園芸ブームによる盗掘や林道の延伸
・燃料用樹木伐採等の里山管理がなくなって、林内が暗くなるなど、環境・気候条件の変化




保全のために必要なこと
 このため、保全・復元の技術や知見が求められていますが、その生育環境全体を知る生態学的レベルの知見が必要です。

君津市のミツバツツジを調べました
 そこで、里山にミツバツツジが多く自生していた房総の君津市で生態学的調査を行いました。


キヨスミミツバツツジ


調査対象としての君津市
・市の民家にミツバツツジがよく庭木として見られ、特徴的景観がある。
・君津市は町づくりにミツバツツジを積極的に活用している。



川に沿って上流から下流域(市街地)まで調査しました
 小糸川の上流域(豊英)、中流域(清和)から下流域(三直、子安)の4地区の庭先にミツバツツジ類がある民家(各地域毎20軒)について、その生育実態状況と土壌状況を調べました。
 調査した本数の合計は以下のようです。
調査本数 ミツバツツジ計238本
キヨスミミツバツツジ計 72本
ヤマツツジ(上流域のみ)計 82本


「樹勢」は気候や土性に影響されています 
調査結果のうち、「樹勢」に影響を与える因子を多変量解析等で解析すると、ミツバツツジでは地域と病虫害が、キヨスミミツバツツジでは地域と土性の影響が強いと判断されました。

地域 「地域」の要因が強いということは、受精に影響を与えているのが気候であり、ミツバツツジ類が夏季に冷涼湿潤な房総低山地の気候を好む
土性 「土性」の要因が強いということは、キヨスミミツバツツジが指し都度上に弱く、砂質土壌が多いか流域でその影響が現れたことを示唆している。


天然更新由来苗木の生育条件
 天然更新由来の苗木は少なかったのですが、その立地は、石垣か岩上で、表面はコケに覆われた日陰という共通条件がありました。ミツバツツジ類は乾燥しにくく、水はけがよい立地で他の植物との競合も少ない貧栄養条件で、種子の下種更新ができるようです。

出典:"ミツバツツジ類保全のための地域生態学的研究 −房総・小糸川流域における分布と民家庭先の生育実態-" 小林達明・勝見典子・古賀陽子(千葉大学)長谷川秀三・新井雅夫(ジオグリーンテック梶j第30回日本緑化工学会研究発表(1999)