野生ツツジ類の保全と復元を目的としたコバノミツバツツジとモチツツジの播種実験


野生ツツジの保全と復元
 近年、利用されぬまま放置された里山の農用林や薪炭林などの二次林では景観が乱れ、生物多様性も低下するなどの問題が各地で見られます。
 これに対処するには、実態把握と同時に保全や復元のための技術を進展させる必要があり、さらにその復元が景観的にも好ましいものであることも重要です。
 そのような保全・復元すべき種の一つとして、野生ツツジがあげられますが、各地で衰退が見られ、復元技術も多くが手つかずの状態です。

野外播種実験の試み
 そこで、関西地方の代表的な野生ツツジであるコバノミツバツツジ(写真1)とモチツツジ(写真2)を用いて、野外での播種実験から取り組みました。
         

実験の内容
 表 1の4種の播種区(各区は15p×25p)から構成されるプロットを、ヒノキ林内と林外のそれぞれに、各3プロット設定し、1998年4月に、コバノミツバツツジとモチツツジの種子(試験地内で前年に結実した種子を室温乾燥保存したもの。発芽率80%以上確認済)を各区100粒づつ播種し、約10日に一度観察記録を行いました。

表 1 播種区内容

@赤土 (試験地内の心土)
A赤土 同上、但し播種後に1p覆土
B厚層基材 ソイルファクター(日本植生)+ピートモス
Cコケ 試験地内から採取したハイゴケ、タチゴケを水洗


実験結果
 コバノミツバツツジの結果例を図1に示しました。



 棒グラフで示した累積発芽数(播種後150日目の9月3日までの発芽数)は、林内、林外共に、赤土は覆土の有無に関わらず不良で、厚層基材やコケがはるかに勝りました。
 しかし、折れ線グラフで示した生存率(9月3日生存数/累積発芽数)は、林内と林外の差異が顕著でした。
 総合的には、林内の厚層基材と林外のコケが優れているということになります。これはモチツツジでも同様でした。

 以上は、はじめの一歩です。より適切な結論を得るためには、いっそうの研究が必要ですので、今後とも試験を続けてまいります。

出典:野生ツツジ類の保全と復元を目的としたコバノミツバツツジとモチツツジの野外播種実験 森本淳子・柴田昌三(京都大学農学部)長谷川秀三(ジオグリーンテック)1998年度造園学会関西支部大会発表
野生ツツジ類の保全と復元−1(コバノミツバツツジとモチツツジの播種実験)