のり面植栽木の根系発達と土の硬さについて


土壌への根の広がりと斜面安定
 のり面に生育している樹木の根は、土中に縦横に広がるので、斜面の安定に大きく寄与していますが、根の広がりは樹木が健全に生育するために最も必要な条件でもあります。
 その根の広がり方は、土壌の硬さによる影響が大きく、硬い土では根の伸長が妨げられます。

土の硬さを計る測定器
 土を掘らずに表面から土の硬さを連続的に測定できる「長谷川式土壌貫入計(*)」は、緑化地を中心とした土壌調査に広く使用されてまいりましたが、本器は現在、建設省、住宅・都市整備公団、日本道路公団等の公式な緑化土壌調査用具としても活用されています。
(*)当社代表取締役 長谷川秀三が開発したもの。



のり面植栽木の根系発達と土壌の硬さ
 そこで、この長谷川式土壌貫入計(以下「貫入計」)を使用して、のり面緑化木周辺の土壌硬度を測定し、その後に根元付近を掘って根系調査を行い、土壌硬度(貫入計による土の軟らか度指数(S値))と根の広がりの関係を調べました。
 調査地は関東ロームや稲城砂層を切土した面(勾配1:1.5〜1:1.8、エキスパンドメタルまたはコンクリートのり枠使用)に、表土が客土され、各種緑化木が植栽されてから5〜10年が経過した場所です。
 貫入計の読取グラフは、過去の知見に基づき、@多くの根が侵入困難:S値0.7(cm/drop)以下[黒色]、A根系発達に阻害あり:S値0.7〜1.0[灰色]、BS値1.0〜1.5程度までは阻害がある場合があるがそれ以上では阻害がない[白色]、に区分しました。
 図1はヤマザクラの調査例です。


図1



 客土の黒ボク層は軟らかく、根系は発達していますが、下の稲城砂の地山層ではS値が1以下となり、ほぼ完全に根の発達が止まっているのがわかります。
 しかし、硬い土壌に根が入りやすいとされているクロマツやコナラでは、S値が1以下の硬い層でも根の伸長が認められています。(図2)

図2


 したがって、硬い基盤が浅いところで出現しやすい箇所には、根系侵入力の強い樹種を選択して植栽すれば、良好に生育してのり面の安定にもつながることがわかります。

 貫入計は、試坑を掘らずに表層から深さ方向に連続した硬さの測定が得られ、山中式硬度計のように、砂の測定等で実際より軟らかい値(たとえば図1の下層の稲城砂層では山中式では17oという極めて軟らかい値を示した)を表示することもないなど多くの利点があります。
 その貫入計のS値グラフを根系図と並列表記することによって、植栽木の根系発達状況と土の硬さの関係をより適切に把握することができました。
 今後はより多くの樹種について調査事例を増やし、樹種別の判断基準等の精度を上げるつもりです。

出典:のり面植栽木の根系発達と土の硬さについて 長谷川秀三(ジオグリーンテック梶j、大石武郎・折原夏志(住宅・都市整備公団)第27回日本緑化工学会研究発表(1996)