ウッドチップマルチングの分解について


植物発生材の利用法とウッドチップマルチング
 植物発生材、特に剪定枝葉等の木質系植物発生材に最も多用されているリサイクル手法は、以下のような粉砕(チップ化)物の利用です。

植物発生材の利用 @堆肥化素材として利用
Aマルチング素材として利用


  このうち、堆肥化は当社が長年取り組んできたテーマですが、ここでは、Aのマルチング利用についての研究を紹介します。
 ウッドチップのマルチング利用は、次のような効果が期待できます。

ウッドチップのマルチング利用効果 @粉砕後から、堆肥化のように時間がかからず利用可能。
Aマルチング効果(防草、温度緩和、水分変化緩和等)が期待できる。
B時間経過と共に分解・土壌還元して肥料化する。


(注:効果以外に問題点もありますが、ここでは省略します。当社では、これらに関する多年の調査研究実績があります。)

分解効果を定量的に確認する
 これら利点のうち、防草効果等のマルチング効果は他のマルチング材も有する効果であり、ウッドチップマルチの最大のポイントはBの肥料化効果を持つことにあります。しかし、その実態はこれまでほとんど知られていません。そこで、ウッドチップマルチの分解と肥料効果の発現について調べました。

日比谷公園のチップマルチで知るチップの分解
 東京都の日比谷公園では、剪定枝葉のウッドチップマルチング(厚さ10p程度)が経年的に行われている場所があります。このチップは粒度が公称5〜25o程度とされる比較的細かいものです。



施用年次別チップの炭素率
 そこで、同公園内の施用年次が異なる場所からチップ材を採取して炭素率(C/N比(*))を測定しました。

 採取は、1994年と、1997年の2回実施しました。
 測定結果を図1に示します。
 1994測定(―○―)では、当年施用のチップ材はC/N比が50を越える値となっていましたが、施用後1年では17.5まで下がっており、それ以前に施用されたものと同様の値となっていました。
 この傾向を再確認するため、1997年に再度実施した結果(―■―)では、1年経過物のC/N比は29.1と、1994年測定結果より高い値を示しましたが、2年経過物は19.9とほぼ(それ以前に施用されたものと同様の)安定した値を示しました。
 以上より、本調査の対象とした粒度の剪定枝葉粉砕チップでは、施用後2〜3年以内に(分解の指標となる)C/N比が、土壌の値とほぼ同程度まで低下して安定化することがわかりました。

(*)炭素率(C/N比):炭素量(C)と、窒素量(N)の比率を言う。植物中の炭素含有量は、種類にかかわらずほぼ40%程度で一定だが、窒素量は部位によって異なり、木質部は少なく葉などは多いので、一般に木質の炭素率は100以上、葉の炭素率はその半分程度になる。しかし腐朽して微生物分解を受けると、すべての生物性有機物は最終的に11前後の炭素率に安定すると言われている。したがって、炭素率は分解程度の把握と肥料効果発現の類推のためのバロメータになる。

その他(チップ敷設後の発酵温度)
 出典の研究報告には、チップ敷設後の発酵温度実験結果も示してありますが、ここでは分解に限定して紹介しました。興味がある方は資料をご請求下さい。

出典:ウッドチップマルチングの分解について 藤崎健一郎・勝野武彦(日本大学)、長谷川秀三・村中重仁(ジオグリーンテック梶j、鈴木良治(東光園緑化梶j第28回日本緑化工学会研究発表(1997)